法人の皆様!開業したら税務署への届出を忘れずに!
こんにちは。杉並区方南町の税理士、澤田祐子です。
ゴールデンウィークも今日が最終日。澤田家は、子ども達も大学生になったので、特に家族での移動はしませんでした。なので、ぼちぼち都内をうろうろしながら、半分仕事なゴールデンウィークとなりました。
さて、前回は個人事業主の開業届について書きましたが、今回は法人の税務上の開業にまつわる届出書についてです。
個人事業主の皆様と同様に、この4月から会社を立ち上げた方も多いと思います。法人登記も終わり、事業が回り始めていることと思いますが、個人同様に税務署への届出を忘れてはいけません!
法人も!税のメリットを受けるためには締め切り厳守で!
僕は個人事業主だけれど、法人も設立した場合に何か届出が必要なの?
法人も、個人と同様に設立登記が終わったら、税務署に届出が必要です。特に税のメリットを受けたい場合は、期限があります。
個人事業主と同様に、法人も設立した場合には税務署に届出が必要です。法務局から税務署に、「オタクの所轄に●×株式会社ができたみたいですよ!」と連絡が行く訳ではなく、法人自らが届出を提出する必要があります。
また、法人の場合は税務署だけでなく、法人が所在する都道府県、市区町村へも届出を行う必要があります。今回のブログでは、税務署へ提出する書類について、見て行きたいと思います。
税務署へ提出する、法人を設立した場合の主な届出書、締め切りを見てみましょう。
届出書名 | 届出期限 | 添付書類 |
内国普通法人等の設立の届出書 | 法人設立の日(設立登記の日)以後2月以内 | 定款 |
青色申告の承認申請書 | 設立初年度の場合は、設立の日以後3月を経過した日と、設立最初の事業年度終了の日の早い方 | - |
減価償却資産の償却方法の届出書 | 法人設立第一期の確定申告書の提出期限まで | - |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書 | 開設の日から1月以内 | - |
適格請求書発行事業者の登録申請書 | 2023年9月30日まで | - |
それでは、少し詳しく見て行きましょう。
青色申告の承認申請書
個人事業主と同じように、法人も青色申告があるんだね。
その通りです。青色申告の承認を受けることで、いろいろな税のメリットを受けることができます。
個人事業主だけでなく、法人も青色申告の承認を受けることで、いろいろな税のメリットが受けられます。会社を設立して、青色申告をする一番大きなメリットは、欠損金の繰越控除と言えるでしょう。
会社を立ち上げた当初は、顧客も少なく、売上が思うように伸びない場合が多いです。その一方で、人を雇ったり、機械や設備を買ったり、経費はかかります。なので、設立第一期は赤字の会社が多いのが実情です。
青色申告の承認を受け、青色申告書を提出すると、設立初年度の損失(赤字分)を最大10年間繰り越すことができます。簡単な数字で見て行きましょう。
※益金、損金をいう言葉をあえて使わずに、売上、販売費としています。
欠損金の繰越控除の例
- 設立初年度
売上 100万円 - 販売費 500万円 = -400万円 →繰越欠損 400万円 ・法人税納税額 0円 - 設立第2期
売上 500万円 - 販売費 200万円 = +300万円
→ +300万円 - 前期繰越欠損 300万円 = 課税所得 0円 →繰越欠損 100万円 ・法人税納税額 0円 - 設立第3期
売上 600万円 - 販売費 200万円 = +400万円
→ +400万円 - 初年度繰越欠損 100万円 = 課税所得 300万円
この様に、設立初年度の赤字分 400万円を、翌年以降の黒字分と相殺することができるため、繰越欠損がある間の法人税負担を軽減することができます。
設立当初の欠損金を最大10年間繰り越すことができるので、赤字の可能性が高い初年度から青色申告のメリットを受けることは大事です。
減価償却資産の償却方法の届出書
減価償却って、機械とかパソコンとか、結構高い資産に関係あるよね。
その通りです。高額な機械や備品を買った場合には、減価償却を行いますが、償却の方法に注意が必要です。
設立初年度は、飲食店ならグリルや厨房設備、製造業なら製造用機械や納品用の車など、高額な資産の購入が多いのではないでしょうか。
その様に、一般的に10万円以上のものを購入した場合には、購入した事業年度に全額を費用にするのではなく、法律で定められた一定期間を通じて、費用に入れていくことになります。これを、「減価償却」と言います。
実は、その減価償却の方法には主に2つの方法があり、個人事業と法人では、法律で決められた原則となる法定償却方法が違います。
個人事業主の場合の法定償却方法は定額法、法人の法定償却方法は定率法です。法定償却方法を取りたくない場合は、この届出書の提出をする必要があります。
定額法と定率法
金額100万円、耐用年数5年の資産を購入した場合の、減価償却費計上額(年初に取得し、12月保有していた場合)
- 定率法
100万円×0.4=40万円 その後、徐々に減価償却費は減っていき、5年目で0になる。 - 定額法
100万円×0.2=20万円 その後、5年目まで毎年同額が減価償却費に計上される。
この様に、取得初年度の減価償却費計上額が、償却方法の違いにより倍違うことになります。そこで、考えなくてはならないのが、損益計画です。
設立初年度の業績見込みがあまり良くない場合、減価償却費が大きいことにより、PLの損失が膨らんでしまう可能性があります。そうすると、融資の審査や、フランチャイザーとの契約などに影響を与える可能性が出てきます。
また、減価償却費を初年度に多く計上する定率法は、使用年数が進むにつれ、計上できる減価償却費が減って行きます。繰越欠損がある場合は繰越欠損が法人税を減らす効果がありますが、それが無い場合には、減価償却費の計上が少額となることで、想定外に利益が出て、法人税納税額が大きくなる可能性もあります。
この様に、設立から数年間の損益予測を立てながら、減価償却方法を決める必要があります。
適格請求書発行事業者の登録申請書
法人を設立した場合もインボイス登録は必要なんでしょ?
法人も適格事業所発行事業者の登録申請は必要です。
法人が登記されると、法人番号が付されます。でも、インボイスはそれだけでは発行できません。法人であっても適格請求書発行事業者の登録が必要です。
前回のブログでも書きましたが、2023年9月30日までに申請が必要ですが、締め切りが近づくにつれて登録までに時間がかかることが想定されます。登録を考えている法人は、早めに登録手続きを取るようにしましょう。
法人も個人事業主と同様に、締め切りまでに届出書の提出が必要です。税のメリットを取るためにも、忘れずに届出を行いましょう。もし、どの様な届け出をするべきか不安があるようでしたら、税理士に相談してみることをお勧めします。
それでは、また次回まで💛
まとめ
- 法人を設立したら、早めに届出書を提出しましょう。
- 青色申告によるメリットは、欠損金の繰越をはじめとして、大きいです。
- インボイス事業者登録は時間がかかります。早めに動きましょう。
税法上の取扱いにおいて、期間や期限は厳密に定められております。本ブログでは制度についてのざっくりとした理解を目的としているため、詳細な期間や期限はあえて表記しておりません。実際の届出の際には、税法上の正確な期間や期限を必ず確認してください。
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